犬の膀胱結石

更新日時:2015.04.09

ミニチュアダックスフンド、オス(去勢)、11歳
《主訴》血尿、排尿しづらい(少量ずつしか出ない)
《検査》①腹部レントゲン検査
     膀胱に結石と思われる不透過性陰影を多数確認

    ②腹部超音波検査
     膀胱内に結石と思われるシャドーを引く高エコー物を多数確認

    ③尿検査
     潜血+++、ストラバイト結晶+、細菌+

《治療》
膀胱内の結石が尿道を塞いでいたため、まず尿道カテーテルにて膀胱内に結石を押し戻し、尿道カテーテルは膀胱洗浄と尿道閉塞の予防のためそのまま留置(3日間で抜去)。加えて抗生物質と止血剤の投与と尿路結石溶解用療法食(ヒルズ s/d)を給与。※入院7日目までは点滴治療を併用。
本来であれば、手術の必要な結石の数、大きさであったが、飼主様が手術を希望されず、また、膀胱内にできている結石は、尿検査でストラバイト結晶が検出されたことから、ごはんやサプリメントによって溶解することのできる「ストラバイト結石」の可能性が高かったので、処方食による内科治療(ヒルズs/d給与)を継続することとした。治療期間中、結石による尿道閉塞には十分に注意してもらった。

《経過》
徐々に結石の大きさ・数が減り、約2か月後には結石は全て溶解されていた


犬の尿路結石

結石には成分によりいろいろな種類がありますが、代表的なものにストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石とシュウ酸カルシウム結石があります。この2種類で尿路結石の80%以上を占めています。

原因

細菌感染
ストラバイト結石の一番の大きな原因は細菌感染です。
菌が出す酵素によりアンモニアができ、これにより尿がアルカリ性に傾きストラバイト結石ができやすくなります。
アルカリ性の尿
細菌に感染していなくても尿がアルカリ性に傾いていればストラバイト結石ができやすくなります。
尿中のミネラルなどの量が増える
マグネシウムやカルシウムなどのミネラルが多くなるとそれらを材料とした結石ができやすくなります。フード、ミネラルウォーターなどが原因になります
尿の量が減る
運動量が減ったり季節の変化などの影響で水を飲む量が減ると、尿が濃くなり結石ができやすくなります。

治療

結石の種類によって異なりますが、内科的に溶かすことのできない結石の場合や、結石が大きくなってしまった場合などは手術により摘出することがあります。内科的には、細菌感染を起こしている場合は抗生物質を服用しミネラルやイオンバランスを調整した療法食に切り替えることで尿の状態を整えることが大切です。
特にストラバイト結石の場合は、尿のpHを整えることで結石が溶解することが期待できます。

今回のダックスくんの場合、結石の大きさ、数、尿道を閉塞してしまうという経過から、手術が必要となる可能性も高かったですが、抗生物質と食事療法に非常によく反応してくれたため、内科的な治療のみで完治できました。

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