食事療法にて良化を認めた慢性腸症の一例

更新日時:2015.04.09

ミニチュアダックスフンド メス(避妊) 8歳齢
《主訴》慢性下痢 体重減少
    数週間前からソフトクリーム状の軟便が続くとのことで来院。
    4か月前と比べ20%の体重減少。
《検査》
糞便検査: 寄生虫、悪玉菌などの感染は認められない
血液検査: ALB 2.5 g/dl と軽度低下 (正常値2.6-4.0g/dl)
超音波検査: 小腸全体に筋層の肥厚、波打ち状サイン

※通常、小腸は波打たずまっすぐで、動きもスムーズ!

上記の検査所見から「慢性腸症」と判断し、治療開始
 治療内容:飲み薬(抗生剤、整腸剤)
治療開始後3週間
 完全に治りきらないため、ごはんを変更
 (ロイヤルカナン 消化器サポート低脂肪)
治療開始後8週間
 症状改善、体重も元に戻った。
 超音波検査でも良化を認めた (下の図)
 筋層(一番外側の黒い部分)が薄くなり、腸全体も波打っていない。

[まとめ]
このダックスさんは、ごはんを変更することで下痢がおさまり、体重も元に戻りました。
「慢性腸症」とは、2-3週間以上にわたって消化器症状(嘔吐や下痢など)がみられ、その症状を引き起こす明らかな原因が見当たらない状態をさします。治療としては、抗生剤の投与や食事療法が行われます。
今回の子の場合、ごはん(食事療法)で良くなってくれたため、慢性腸症の中でも「食事反応性腸症(FRE)」という病気と診断されます。この病気の治療に使うごはんには、おおまかに低脂肪食・低アレルゲン食・高繊維食の3つがあります。どのタイプの食事が合うかは食べさせてみないとわからないため、あげてみて判断することになります。食事療法を行う際には、おやつをやめたり決められた食事のみを与える必要がありますし、治療に反応がでるまで時間がかかることが多いため、ご家族の協力が非常に重要な治療法といえます。
しかし、今回の子のように、ごはんの変更のみで下痢や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が良くなる場合も多く、お薬と違って副作用の心配もないため、まずは試してみる価値のある治療といえるでしょう。

※もし、今回のような治療で良くならなかった場合は、内視鏡検査(生検)やステロイドによる治療を行います。内視鏡検査には全身麻酔が必要ですし、ステロイド治療は肝障害や易感染など副作用を伴うことがありますので、両者とも、十分な説明をさせていただいた上で実施することになります。

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